横浜市在住のおでかけ好きの地元ライターがとっておきの横浜の魅力を、地元民目線で紹介します。
日本におけるビール産業発祥の地である横浜。
1870年、山手町の外国人居留地に「スプリング・バレー・ブルワリー」が創設されたことから、日本のビール産業がスタートしました。
現在は横浜市内に10か所以上のクラフトビールのブルワリー(醸造所)があり、その数は全国の市町村のなかでトップクラスです。
今回は横浜で最も長い歴史を持つクラフトビールの醸造所「横浜ビール」と、2024年にオープンしたばかりの「Yellow Monkey Brewing」を取材。クラフトビールのまち・横浜の魅力を探りました。
目次
横浜のクラフトビール①【横浜ビール】乾杯で人を繋ぐ、横浜に根差したブルワリー

まずご紹介するのは、横浜市内で最も長い歴史を持つクラフトビールの醸造所「横浜ビール」です。「人と人を繋ぐビールで横浜の暮らしにワクワクを!」を合言葉に、横浜のまちを盛り上げるさまざまな取り組みを行っています。
コミュニティハブを目指すレストラン「UMAYA」

JR・桜木町駅、みなとみらい線・馬車道駅から徒歩5分ほどのところに醸造所を構える横浜ビール。醸造所併設の本店レストラン「UMAYA」は、1階がビアスタンド、2階が地元食材を使ったレストランとなっています。
「横浜ビールの拠点として、そしてまちのコミュニティハブとしてこの場所がより活きるように、お客さま同士が交流できるような空間を意識してリニューアルしました」と語るのは、広報担当の工藤葵さん。

2024年1月にリニューアルオープンした1階のビアスタンドは、スタンディング席が増え、醸造所をより近くで見られるようになりました。醸造所を間近に見ながら飲むビールは格別です!
地元生産者との取り組みから生まれたビール
“ビールのオリンピック”とも呼ばれる、世界最大規模のビール審査会「World Beer Cup 2024」ジャーマンスタイルアルトビア部門で銀賞を受賞した「アルト」をはじめ、実力派の商品が揃う横浜ビール。なかでもおすすめしたいのが、缶ビールの「横浜ウィート」(税抜き370円)です。

「横浜ウィート」は、横浜市瀬谷区の「岩﨑農園」が育てた小麦を使用しています。工藤さんによると、「横浜ウィート」は、小麦の生産者である岩﨑さんが「このビールには自分の小麦の香りと味わいが反映されている」と太鼓判を押す一品だそうです。

私のイチオシは、「めぐりあい」というシリーズのビール。神奈川県内・横浜市内の生産者と共に製造している、地域に根差したビールです。
「横浜綱島 桃エール」、「横浜港北フレッシュホップエール」(共に税抜き600円)など、地元生産者が作った果物や農作物を用いて、季節限定で毎年販売が行われています。ラベルのイラストは、イラストレーターが畑に足を運び、現地の風景を見て作成したというこだわりにも注目です。
※商品価格は、2024年12月時点の情報です
ビールとまちを楽しめるイベントも開催

横浜ビールの魅力を語るうえで外せないのが、月に1度開催されている「横浜ビールランニングクラブ」です。このイベントは、予約も参加費も不要。みんなで横浜のまちを走った後に、無料で提供されるビールで乾杯をするというイベントです。
工藤さん「ランニングとビールを楽しむことが目的なので、走る習慣がない方でも気軽にご参加いただけます。初めての方や、お一人で参加される方も大歓迎です。一緒に走ってビールを飲むと、イベントが終わる頃には皆さん自然と友達になっています」
身体を動かした後に、誰かと一緒に飲むビールは格別。走り終わって乾杯する瞬間の熱気と一体感を、ぜひとも体感してほしいです。
<基本情報>
横浜ビール 本店レストラン UMAYA
住所:神奈川県横浜市中区住吉町6-68-1 横浜関内地所ビル
URL:https://yokohamabeer.com/restaurant/
Instagram:https://www.instagram.com/yokohamabeer_umaya/
横浜のクラフトビール②【Yellow Monkey Brewing】2024年にオープンした、新進気鋭のブルワリー
続いてご紹介するのは、「ビールとスポーツを通じて人と人を繋ぎ、笑顔を広める」をミッションに掲げる「Yellow Monkey Brewing」。スポーツブランド「オン・ジャパン株式会社」(横浜市中区)で代表を務めていた駒田博紀さんが、2024年5月に仲間と共にオープンしたブルワリーです。
開放的なタップルーム

Yellow Monkey Brewingのブルワリー兼タップルームがあるのは、横浜市営地下鉄ブルーライン・中川駅。駅前の歩道橋を渡ると、住宅街のなかにたたずむ半屋外のタップルームが見えてきます。
「人と人が繋がるコミュニティハブにしたい」とタップルームへの思いを語る駒田さん。仕事帰りに立ち寄って、ビールを1杯味わって帰る。そんな使い方ができるよう、スタンディングバーのような空間を意識したと言います。

その一方、店内の家具を移動して大人数でテーブルを囲んだり、広々としたスペースを作ってイベントを開催したりと、さまざまな利用シーンに対応できるのも魅力です。

タップルーム前の道は歩行者専用で、通学中の子どもたちがいたり、犬の散歩をしている人などがのんびりとした時間を過ごしています。この道は、ランニングコースとして人気な都筑緑道の一部でもあり、信号に遮られることなく15kmほどのコースを一周することができます。
過去には横浜ビールと共にビアランニングを開催したこともある駒田さん。Yellow Monkey Brewingでも、立地を生かして「Run for Beer」というランニングイベントを開催しています。
タップルームの奥にはなんとシャワールームが完備されており、ランニング後に一汗流してから、さっぱりとした身体でビールを楽しむこともできます。
遊び心の込められたオリジナルビール

Yellow Monkey Brewingがつくるビールのコンセプトは、「Be pirates. Be playful.」(もっと自由に。遊び心をもって。)です。ニュージーランドで修行経験のあるヘッドブルワー*の齋藤健吾さんが、王道を知りつくしたからこそ作れる、型にはまらないビールを生みだしています。
*ブルワー=ビール醸造(製造)を担当している人の総称。ビール職人
駒田さん「Be pirates. Be playful.の精神で、王道を大切にしながらも、時には既存の枠組みや常識から離れて、実験的で遊び心のあるビールを作りたいと思っています」

ブルワリーがオープンして最初に作られたのは、「KAIZOKU (カイゾク)」というビール。「これから海に漕ぎ出していく」という決意がこめられた王道のラガービールです。
ニュージーランドのモルトとホップを1種類ずつ使用した「SMASH (Single Malt And Single Hop)」という製法のピルスナーで、しっかりとした味わいながら、とても飲みやすい味に仕上がっています。
もう1つのおすすめが「TORIAEZU (トリアエズ)」。「飲んだらとりあえず笑顔になってしまう美味しさだから、とりあえずこれを飲んでみて」という思いで名付けられたビールです。
ビールでありながら日本酒の酒酵母が使用されており、IPAらしい苦味に、日本酒酵母とニュージーランドホップのフルーティーさが加わった、素直に「美味しい!」と感じられる一品です。
※「KAIZOKU (カイゾク)」、「TORIAEZU (トリアエズ)」はオープン価格にて販売

今後は精米したときに出る米ぬかを原材料に加えるなど、仕込みの度に少しずつアップデートしていく予定なのだとか。そのほかにも、熱海や小田原など各地の農家とコラボレーションした遊び心のあるビールが次々と醸造されています。
Be pirates. Be playful.の精神で作られる魅力的なクラフトビール、ぜひ注目を!
<基本情報>
Yellow Monkey Brewing
住所:神奈川県横浜市都筑区中川1-17-6 ベガ・ポラール1階
URL:https://yellowmonkeybrewing.com/
Instagram:https://www.instagram.com/yellow.monkey.brewing/
クラフトビールによって繋がるコミュニティ

2つのブルワリーを訪れて感じたのは、「クラフトビールのまちとして、横浜のブルワリーが一体となってまちを盛り上げたい」という熱い思いです。
取材の最後に、Yellow Monkey Brewingの駒田さんはこのようなお話をしてくれました。
駒田さん「僕自身も横浜への移住経験者ですが、『3日いればハマっ子』と言われるように、横浜は『受け入れる』文化のあるまちだと感じます。だからこそブルワリーを立ち上げるときは、横浜にこだわりました。横浜にあるブルワリーは、仲間として一緒に盛り上げようという連帯感があるので、クラフトビールのまちとして『YOKOHAMA』をぜひとも世界中に広めていきたいです」
横浜の地で互いのブルワリーをリスペクトしながら作られたビールで、乾杯をする。たとえ初めて会う人であっても、共にビールを飲むことで、心の距離を縮めることができる。今回の取材ではそんなクラフトビールの可能性を垣間見ることができました。
単なる飲み物ではなく、人と人を繋ぐ可能性を秘めたクラフトビール。ぜひ横浜のブルワリーを巡って、クラフトビールのまちならではの”繋がり”を感じてみてください。