横浜で保育園やカフェ、サロンなどの子育てを支援する取り組みを紹介。それぞれ独自の居場所づくりとは?

横浜市内では、保育園、企業、大学、NPO、自治体などが連携し、子育て中の方々の安心につながるさまざまな支援を行っています。

今回は、横浜国立大学の敷地内で保育事業を展開する「森のルーナ保育園」をはじめ、地域での居場所づくりに取り組む「こまちカフェ」と「こよりどうカフェ」、さらに企業が地域の方々や自治体等と連携してスタートした「プチ☆スター」をご紹介します。

■大学キャンパスに子どもたちの笑い声が響く「森のルーナ保育園」

森のルーナ保育園の画像
森のルーナ保育園正面入り口

横浜市保土ケ谷区の横浜国立大学の敷地内にある「森のルーナ保育園」は、2012年に認可保育園として開設されました。

森のルーナ保育園の画像
森のルーナ保育園(保土ケ谷区)

当時は、日本全体で待機児童問題が急速に深刻化していた頃で、特に都市部では保育所の不足が顕著でした。その解決に向けて、横浜市が横浜国立大学に協力を依頼したことが開園のきっかけです。開園以来、大学は敷地を無償で提供し、地域の子育て支援に貢献しています。

園内の一室の画像
柔らかい光が差し込む園内

森のルーナ保育園は、大学キャンパス内という環境の中で運営されており、その独自性が子どもたちの成長に大きな影響を与えています。

園庭の先に広がる大学のキャンパスの画像
広々とした園庭。園庭のすぐ外は大学キャンパス

園職員によると、森のルーナ保育園の特色として「落ち着いた環境」が挙げられ、学生たちも子どもたちを温かく受け止めているそうです。

森のルーナ保育園の入口から見た外の景色の画像
森のルーナ保育園の入口から見た外の景色。園の目の前は緑豊かな大学のキャンパスになっている

発達心理学を専門とする大学教授からの研修を園職員が受ける機会もあるそうで、大学の敷地内という立地ならではの、他の保育園にはない大きなメリットです。

近隣小学生の通学路にもなっている大学のキャンパスの画像
キャンパス内は保育園の園児だけでなく、小学生の通学路でもある。通路には、子どもへの気遣いを呼びかける看板があった

また、子どもたちと大学の学生が直接触れあえる取り組みも特徴的です。
例えば、七夕の行事では大学の留学生が民族楽器の演奏を披露したり、世界各国のお菓子が配られたり、交流を通じて、子どもたちが異文化に触れる機会を提供しているそうです。

ハロウィンの時期には園児たちが仮装して大学のキャンパス内を散歩し、「ハッピーハロウィン!」とすれ違う大学生に挨拶すると、学生たちも笑顔で応じるなど、微笑ましい姿も見られたそうです。保育園と大学が自然に交流する環境が整っています。

ハロウィンの様子の画像
ハロウィンでは、大学のキャンパス内を子どもたちが仮装をして歩く

園の運動会では大学の体育館を使用するなど、大学との良好な関係がうかがえます。園児たちは多様な国籍や年齢の大学生・大学院生と接することで、幼いうちからさまざまな価値観や視点に触れることができるでしょう。

さらに、保育園は今後、認定こども園への移行を予定しており、子育てしながら学ぶ学生や大学院生が、一時利用も含めて園を利用できる可能性も広がるそうです。どんな状況でも学び続けられるような支援にも力を入れています。

基本情報
社会福祉法人あおい会 森のルーナ保育園
住所:横浜市保土ケ谷区常盤台79-1
URL:https://luna-hoikuen.com/mori/

■子どもが地域とつながる「こまちカフェ」

こまちカフェの画像
戸塚駅西口にあるこまちカフェ

戸塚駅西口を出て、旭町通りを進んだところにある「こまちカフェ」。2014年に「子育て中の親御さんたちが、両手で温かいご飯を食べられるように」と、認定NPO法人こまちぷらすが立ち上げました。

カフェ内の様子の画像
カフェ内の様子(写真提供=こまちカフェ)

平日のランチタイムは、ボランティアの「見守りさん」がカフェを訪れ、お母さんやお父さんがご飯を食べている間、子どたちの安全を一緒に見守ってくれます。「見守りさん」は学生や定年退職した方などさまざま。普段、ゆっくり自分の食事に集中できないという親御さんにとって、ご飯を温かいうちに、さらに「両手で」食べられる時間はとても貴重です。

カフェ内の見守りボランティアさんの様子の画像
カフェ内の様子(写真提供=こまちカフェ)

ボランティアの学生にとっては子育て前の経験になり、仕事を退職した方にとっては培ってきた経験・スキルを活かす場所となっているそうです。子育て世代を「助ける」のではなく、お互いに無理なく良い影響を与え合えるのではないでしょうか。

カフェ内で提供する料理の画像
カフェで提供する料理(写真提供=こまちカフェ)

カフェで提供されるメニューにも工夫が凝らされています。卵、乳製品、小麦粉、お肉不使用。これは健康面に配慮しただけではなく、アレルギーが原因で外食できない人も、気を遣わずに一緒に他のママ友たちとテーブルを囲めるようにしたいからだそうです。

カフェ内の手作り雑貨の販売スペースの画像
カフェで販売されている手作り雑貨など(写真提供=こまちカフェ)

また、こまちカフェでは、カフェスペースのほかに手作り雑貨を販売するスペースが用意されていました。30名ほどの作家さんが作った、雑貨や小物など世界に一つだけの作品が並びます。

これは、作家さんにとっては子育て中でも特技を活かして社会とつながれる窓口の一つであると同時に、カフェに来店するお客様にとっては足を運ぶきっかけともなっています。

ほかにも、親子をサポートするイベントも充実していて、ママと赤ちゃんのための写真撮影会や地域の妊婦の方や0歳児を持つママさん同士をつなげるおしゃべり会、子育てのヒントになるワークショップなどが行われています。

カフェマネージャーの守家さんはこう語ります。
「地域のさまざまな人に見守られる経験は、子どもたちにとって大きな糧になると実感しています。また、子育て中の親御さんたちには、子育ての悩みをひとりで抱え込まず、『自分だけで頑張らなくていい、周りに頼っていいんだ』と感じてもらいたいです」

この姿勢は、こまちぷらすさんが高齢者の見守り支援などを展開しているヤマト運輸株式会社神奈川主管支店さんと協働で立ち上げた「ウェルカムベビープロジェクト」でも体現されています。

ウェルカムベビープロジェクトの「出産祝い」の画像
ウェルカムベビープロジェクトの「出産祝い」。ベビーグッズや絵本などを進呈する(写真提供=こまちぷらす)

赤ちゃんが誕生したご家庭に、地域の色々な人が関わった「出産祝い」を届けるプロジェクトで、地域社会が赤ちゃんの誕生を歓迎し、応援しています。現在、市内では戸塚区、鶴見区で提供しているそうです。

子育てや地域を大事にして、さまざまなニーズに応える前向きな取り組みをされている点が印象的なカフェでした。

基本情報
こまちカフェ
住所:横浜市戸塚区戸塚町145-6 奈良ビル2F
アクセス:JR・横浜市営地下鉄「戸塚駅」下車 徒歩7分
営業時間:10時〜17時(ランチタイム=11時〜14時)
定休日:日曜・祝日・第二月曜日
URL:https://comachicafe.com
https://comachiplus.org(認定NPO法人こまちぷらす)

■体に優しいお惣菜をテイクアウト「こよりどうカフェ」

善了寺内にあるこよりどうカフェの画像
善了寺境内にあるこよりどうカフェ

戸塚駅近くにある「こよりどうカフェ」は、善了寺の境内にあるお堂を改装して作られたカフェです。「こまちカフェ」と同じく、認定NPO法人こまちぷらすが運営を行っています。

こよりどうカフェ店内の画像
お堂を改装したカフェ店内

基本的なコンセプトは「こまちカフェ」と共通していますが、独自のサービスとして2022年12月からお惣菜のテイクアウト販売を始めました。保育園のお迎え時など、子育て世代の忙しい毎日の中で、夕飯を手軽に持ち帰ってもらおうという試みです。

体にやさしいお惣菜の画像
体にやさしいお惣菜を販売

地域の食材を使った体にやさしいお惣菜で、子育て中の方はもちろん、地域の方々など幅広い利用者から支持を集めています。

お惣菜の一つ「みそだま」の画像
お惣菜の一つ「みそだま」は、お湯に入れるだけで栄養たっぷりの味噌汁が出来上がる

こよりどうカフェ」はさまざまな保育園と連携して、お惣菜を保育園に届ける取組も行っています。保護者が事前にネットで注文・決済したお惣菜を保育園で受け取ることができます。
こうした先進的な取り組みが認められ、内閣官房の「地域における孤独・孤立対策に関するNPO等の取組モデル調査」事業に採択されました。

こよりどうカフェの取組は、働きながら子育てをしている世帯が地域で孤立しないことを目的としていて、「家族のみで頑張らずに頼っていい」というメッセージを伝えて、お惣菜を通じて保育園や保護者、カフェに集まる地域の方が関係性を作ってきました。

地域の商店会主催にて、こよりどうカフェが企画担当をしたキャンドルナイトにも、多くの保育園が参加されたそうです。

お惣菜セットの例の画像
お惣菜セット(家族4人分セット)を盛り付けた例

店内には地域のチラシや情報誌が置かれており、訪れる人々が地域を知るきっかけになっています。特に、忙しい毎日の合間に立ち寄るママたちにとって、地域とのつながりを持つ貴重な場です。このカフェは地域の方も広く利用するので、地域社会のハブのような役割も果たしています。

地域とママさんをつなぐ役割をもつこよりどうカフェの画像
地域とママさんをつなぐ「こよりどうカフェ」

基本情報
こよりどうカフェ
住所:横浜市戸塚区矢部町125 善了寺内
アクセス:JR・横浜市営地下鉄「戸塚駅」下車 徒歩5分
営業時間:10時〜17時(金曜のみ21時まで)
定休日:日曜・祝日・第二月曜日
URL:https://coyoridocafe.com
https://comachiplus.org(認定NPO法人こまちぷらす)

■親子が安心して過ごせる居場所を創出する「プチ☆スター」

コンフォール明神台の画像
コンフォール明神台

地域の子育て支援関係者と横浜市保土ケ谷区、UR都市機構が連携して2023年9月に、横浜市保土ケ谷区のコンフォール明神台(UR賃貸住宅)で立ち上げたのが、子育てサロン「プチ☆スター」です。

毎月1回、コンフォール明神台の集会所で開催している0歳から参加可能な子育てサロンで、地域の主任児童委員や幼稚園の先生などがそれぞれの強みを活かして協力しながら、親子向けの遊びなどを、さまざま企画しています。

プチスターでの工作の様子の画像
月1回の子育てサロン「プチ☆スター」では、親子で楽しめる工作なども企画している
プチスターのある日のタイムテーブルの画像
取材時のタイムテーブル。いろいろな企画がいっぱい

コンフォール明神台ではもともと2022年に、子育て世帯(0歳から小学校低学年の子ども対象)向けに子育てに関する情報発信やイベント企画、相談対応などを行う「UR子育てサポーター」を始めました。

この活動を続けていく中で、主任児童委員・自治体からは「身近な親子の居場所づくりをしたい」、地域の幼稚園関係者からは「幼稚園のスキルを地域に還元したい」といった地域の声も聞いたそうです。

そこで、子育て世帯の応援はもちろん、地域の方のニーズにも応えるかたちで、地域と連携した「プチ☆スター」が立ち上がりました。

幼稚園の先生もサポートとして参加している画像
幼稚園の先生も参加して歌や工作をサポートする

これまで「プチ☆スター」には多くの親子が参加され、安心して過ごせる居場所を創出してきました。参加した親子同士が気軽に交流することで、地域の中で、子育て世帯の緩やかなつながりが生まれています。

こうした身近なつながりは、地域社会の中で、何か相談事や悩みがあったときに「頼れる人がいる」という安心感を生み出してくれるのではないでしょうか。

リピートで利用する親子の画像
開始から一年。満足度が高く、リピート利用が多い
たくさんの遊び道具の画像
子どもたちが楽しめる、遊び道具をたくさん用意している

子育てサロンという地域に根ざした活動を継続してきた「プチ☆スター」。毎回参加する子どもたちは出席カードを持ってきていて、そのスタンプを押すときの楽しそうな笑顔が印象的でした。

出席カードにスタンプを押す子どもの画像
出席カードに楽しそうにスタンプを押す子ども

2024年9月以降は、地域主体の取り組みとして発展させ、地域の幼稚園や保育園、UR都市機構はバックアップ役として支援を続けています。「プチ☆スター」の活動を通じて、地域全体で子育てを支える風土が醸成され、住みやすい街づくりにつながることが期待されます。

基本情報
「プチ☆スター」
住所:横浜市保土ケ谷区明神台2-3 コンフォール明神台
開催:月1回を予定
UR子育てサポーターリンクURL:https://www.instagram.com/ur_yokohama_kosodate/

■「地域で子育てを支えよう」という気持ちが伝わる街

今回お話を伺ったそれぞれの取り組みから、子育てを支えようとする地域の方々の温かい姿勢が感じられました。子どもたちやその家族が安心して過ごせる居場所があることは、地域全体の魅力も高めます。

これから新たな横浜暮らしを検討する際には、こうした地域の新しい面にも注目してみてはいかがでしょうか。

この記事を編集した人

ペンネーム:ナオト (横浜在住歴:40年)
横浜の地域メディアやウェブコンテンツのライターとして活動中。趣味はドライブで、横浜市内のほとんどの道路はすべて頭に入っています。市内のいろんな場所へ出かけて、新しい道、新しい建物を見るのが好きです。小学生の娘と幼稚園の息子の子育て中です。

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