動物園を身近に感じられる横浜で、命の大切さを学びながら、子どもたちの心を育む

横浜市在住のおでかけ好き地元ライターが、とっておきの横浜の魅力を、地元民目線で紹介します。

横浜市には、野毛山動物園」「金沢動物園」よこはま動物園 ズーラシアの3つの市立動物園があります。都会の中で野生動物に会えるのはもちろんですが、野毛山動物園は街のすぐそばで動物を感じて頂けて、金沢動物園は緑が多く、よこはま動物園 ズーラシアは広大な敷地の中に多くの動物たちを見ることができるといった地域性を活かした動物展示に特長があり、それぞれが個性豊かな動物園です。

中でも、昭和26年開園の「野毛山動物園」は、親子三世代で通うファンも多く、子ども目線の展示など、子育て世代にとってうれしいポイントがいっぱい。

親子でもっと楽しめる動物園にと、リニューアル計画が進む野毛山動物園の魅力を園長の田村理恵さんに伺いました。

野毛山動物園の推し①:都会の動物園でファースト・ズー体験

横浜の中心地・みなとみらいからほど近い西区の小高い丘の上にある野毛山動物園は、1951年(昭和26年)に野毛山公園の一帯に開園した、横浜市で最も歴史ある市立動物園です。

開園当初は、数種類の小動物がいるのみでしたが、開園74年を迎える現在、シマウマ、キリン、アライグマ、ツキノワグマ、クジャクなど65種類ほどのバラエティ豊かな動物が暮らしています。

「野毛山動物園のモットーは、“小さな子どもが初めて動物に出会い、ふれあい、命を感じる動物園”なんです。都心の丘陵地の地形を生かしたレイアウトで、動物や鳥がすぐそこにいる距離感で見られるので、小さいお子さんが初めて訪れる“ファースト・ズー”にピッタリです。キリンのまつげまではっきり見えるなんて、大人でもうれしいですよね」と田村園長。

動物たちの息遣いも聞こえてきそうなくらい動物の距離も近く、コンパクトにまとめられた野毛山動物園は、子どもたちが動物園を楽しめる工夫がされています。

実物のキリンを見て大興奮の子どもたち
「わぁ、おっきい」「首が長い!」と、実物のキリンを見て大興奮の子どもたち。見守る田村園長の姿も

野毛山動物園の推し②:入園料は無料!最寄り駅から徒歩15分の野毛山動物園は都会のオアシス

野毛山動物園は、JR京浜東北線・横浜市営地下鉄「桜木町」駅から徒歩15分、京急線「日ノ出町」駅からは10分。3路線が使えるアクセスの良さも、子育て世代にはうれしい限り。

動物園を楽しんだ後にみなとみらいでショッピングしたり、中華街まで食事に行ったりと、アフターズーを楽しめる場所が近くにあるのもポイントです。

さらに、人気の理由はもうひとつ。野毛山動物園は都会の動物園には珍しく、入園料が無料!なんです。

「お財布を気にせず、家族みんなで動物園にお出かけできる気楽さも魅力の1つですよね。近くに住んでいる小学生は、放課後に公園に遊びに行く感覚で動物たちに会いに来るんですよ。中高生のグループが遊び場として利用していたり、カップルがデートしていたり、ご年配の方が動物たちを眺めながらのんびりお散歩していたり、子どもからお年寄りまで訪れる人の年齢層の幅が広いんです」と田村園長。

野毛山動物園は、誰もが気軽に足を運べる都会のオアシスですね。

野毛山動物園の推し③:動物とふれあえる「なかよし広場」(ふれあいコーナー)

動物の命を五感で感じる貴重な体験

野毛山_ふれあい

野毛山動物園には、モルモットなどの小動物とふれあえる「なかよし広場」(ふれあいコーナー)があります。子どもたちは、動物のさわり方の指導を受け、モルモットやハツカネズミに直接ふれあうことができます。

「ここでのふれあいは、抱っこせずに、動物たちをかごに入れてなでるのが特徴です。まずは、子どもたちに『動物と仲良くなるためには、動物の気持ちを思いやって接しようね』と説明します。お子さんたちにとっては、どうやってさわっていいのか分からないし、力加減も難しいんですね。特にモルモットは、穏やかでおとなしい性格が特徴ですが、その反面、臆病で繊細な一面もありますので『そうっと優しくなでてね』と飼育員がジェスチャー付きで丁寧に指導しています」。

家でペットを飼うことができなかったり、動物に苦手意識があったりする家族や子どもたちも、においや心臓の鼓動、体温に毛の感触など、動物たちの命を五感で感じることができ 、“ふれあいデビュー”で癒されそうですね。

●【小動物のさわり方のポイント】
①動物たちを怖がらせないように優しくなでる
②動物たちが食べものと勘違いしてしまうので動物の口に手を近づけない
③小さな声でお話ししよう

動物好きがヒーローになれる

野毛山動物園の「なかよし広場」は、市内の幼稚園や保育園、小学校の体験学習の場にもなっています。動物たちとの接点があまりない都会では、直接動物に触れる体験が大きな学びの1つになると参加して頂いた方から感想をもらうそうです。

「先日、小学生の体験学習があったのですが、勉強やスポーツが得意な子がヒーローになるように、動物が好きな子は、ここ、なかよし広場のヒーローになれるんですよ。『さわり方は優しい方がいいんだよ』とか『大きな声出しちゃダメだよ』と、みんなに教えてあげて、『自分に任せて!』って得意になって。そんなやり取りを見ていると、子どもたちが自分たちで切磋琢磨して成長している瞬間を感じるんです。“動物にやさしくできることは、人にも優しくできること”に繋がると思うと、これも大切な教育だと考えています。」と田村園長。

動物とのふれあいを通じた子どもたちの心の成長を温かく見守ってくれています。

なかよし広場では、アオダイショウをガラス越しで見ることもできるそう。 「ヘビは苦手な人も多いですが、アオダイショウは、家の守り神と言われていて、決して怖くないんですよ。大人が興味を示せば子どもにも伝わります。ぜひ親子で一緒に見てほしいです」と田村園長からアドバイス。日常では体験出来ないちょっとしたドキドキもあり、親子の会話も弾みそうです。

「なかよし広場」がリニューアルオープン

2025年4月、「なかよし広場」がリニューアル。屋根が設置され、天気に左右されずに動物たちとの時間をより楽しめるようになりました。

なかよし広場
ふれあいコーナー

大きな屋根が目印の「なかよし広場」(ふれあいコーナー)

「今までは雨が降ると動物やお客さまも濡れてしまうし、中止しなければならない時もあったのですが、大きな屋根がついたことで、動物にも人にも優しい空間になりました。」

なお、小動物とのふれあいは事前予約制となります。詳しくは野毛山動物園ホームページをご覧ください。

野毛山動物園リニューアル屋内休憩棟イメージ
屋内休憩棟でホッと一息もできます。

広場の前には冷暖房完備の屋内休憩棟も新しく設置され、暑さも寒さもしのげます。園内の休憩棟が2か所になって、小さいお子さんを連れた親御さんも、より安心して来園できるようになりました。

野毛山動物園の推し④:3つのエリアがリニューアル

野毛山動物園では、さらなる魅力向上とバリアフリー化を目指し、3つのエリアに分けてリニューアルを進めています。リニューアルのキャッチコピーは、“ZOOっとあるから もっとGOODに のげやまどうぶつえん”。

3つのエリアはそれぞれの特徴に合わせて構成されています。

①「野毛山へようこそ」ゾーン  

◆エントランス棟
動物園に来たワクワク感が高まる「ペンギンたちがお出迎えエリア」と多彩で魅力的な商品であふれるグッズショップがオープン

◆ズーペリエンタ!センター
野毛山動物園のリニューアルを特徴づける新たな中心施設。遊びを通して動物たちを深く知ることができる動物展示と”遊び”が一体となった屋内型体験施設を整備予定

ズーペリエンタのイメージ画像
ズーペリエンタ!センター(イメージ)
ズーペリエンタのイメージ画像

「ふれあいパーク」ゾーン

動物を身近に感じ、命を体感できる広場の整備。ヤギなどの身近な動物を見ながら、動物と同じ動作を真似ることで動物の大きさや動きを体感できる場所を整備予定
※「ふれあいコーナーの屋根設置」と「屋内休憩棟」は令和7年春に完成。

進化し続ける野毛山のイメージ画像
間近で動物の動きを体感できる!(イメージ)

「絵本に出てくる動物たち」ゾーン

絵本に登場する動物たちのいきいきとした姿が見られます。

キリンの画像

グッズショップにはどんなものが売ってるかな?遊びを取りいれた展示って?絵本に登場する動物は色々いるなぁ?と、想像するだけでもワクワクします。

以前いた人気のペンギン舎も整備が進められているそう。現状はちょっと階段の多かったりという短所もあるのですが、できるだけバリアフリーの部分を増やされるということで、さらに優しく生まれ変わる野毛山動物園。完成が待ち遠しいですね。

野毛山動物園の推し⑤:レクリエーションから教育の現場へ

開園当初は、野毛山地区の遊園地の中にあり、レクリエーションの場という位置づけだった野毛山動物園。

「当時は、戦後復興で横浜市民の心を癒やす大切な憩いの場所だったんです。その後、高度経済成長期を迎え、時代の変化とともに、動物園のあり方も変わってきました。さまざまな分野の専門家たちとの共同で、野生動物の保全や繁殖、調査研究などをするようになり、動物園は教育の現場へと変化しています」。

動物の画像

例えば、動物の死の原因を追究し、ほかの動物園と共有したり、レッサーパンダなどの絶滅危惧種の動物たちを、掲示板や動物ガイドなどを通じて、訪れる人に現状を知ってもらったり、動物たちのQOL(生活や精神的な満足度)を高めるための工夫など、飼育員や獣医師が協力して動物たちの命を守っています。

野毛山動物園の推し⑥: 推し活も?!来園者の目的はいろいろ

博物館としての役割もあり、“教育の場”としての顔を持つ動物園は、芸術・文化にもつながる場でもあると田村園長は考えます。

「動物園へ来て動物たちに癒やされる人はたくさんいますよね。でも、野毛山動物園を訪れる人の目的は、街の中にあり、無料という特徴から、十人十色。一眼レフのような立派なカメラで写真を撮る人が大勢いらっしゃいます。中には推し活をしている人もいて、お目当ての動物を撮ってSNSにアップしていらっしゃるんですよ。絵を描いている人もいらして、『賞に入選した』とお葉書をいただいこともあるんです。芸術系の大学を目指す予備校生は、足の裏や羽のつき方など、骨格から動物を見ていて、観察力には目を見張りますよ」。

動物の画像

野毛山動物園の推し⑦:夢を育み、人と人とを繋ぐ動物園

「動物が人と人を繋いでくれる」という田村園長。野毛山動物園を訪れる人々からたくさんのメッセージが寄せられ、悲喜こもごもエピソードもたくさん。

「『動物園でプロポーズし結婚して、子供を連れて家族できています』とか、動物園で一日飼育体験をした人が『飼育員を目指すことにしました』など、動物園で夢をかなえたり、夢を見つけたりしてることが、とてもうれしいし、励みになります。先日は『施設に入る前にどうしても来たくて…』と動物たちにごあいさつに来てくださったご年配の方がいました。動物園って人の心に寄り添う場所でもあるんですね」。

昭和・平成・令和へと繋いできた野毛山動物園は、市民の人生ストーリーにも寄り添ってくれているんですね。

園長と園児たちの画像

野毛山動物園の推し⑧:一番人気はレッサーパンダのイチゴちゃん!

野毛山動物園の一番人気は、レッサーパンダ。愛くるしい顔がなんともキュートです。子どもたちはキリンやペンギンも大好き!

「レッサーパンダは“イチゴ”、キリンは“ソラ”という名前がついていますが、多くの来園者がイチゴちゃん、ソラくんと個体名で呼んでくれるんです。誕生日も覚えていて、お祝いに来てくれる方もいて、動物たちの愛され感はハンパないですね!」と田村園長の笑顔がこぼれます。

レッサーパンダのイチゴちゃんの画像
レッサーパンダのイチゴちゃんは御年12歳
キリンのソラくんの画像
つぶらな瞳にキュン。キリンのソラくん

野毛山動物園の推し⑨:動物園に行くおすすめの時間帯は?

せっかく動物園に行くのなら、動物たちの声を聞いたり、動く姿を見たいもの。動物園に行くおすすめの時間ってあるのでしょうか。

「あります! 午前中の早い時間がいいですよ。一日のはじまりの朝は、動物たちも活発に動きだします。あとは、どうぶつガイド。毎日開催されていて、飼育係から、日ごろ動物と密に接しているからこそ聞ける貴重な話が聞けるのも醍醐味です。HPのイベントカレンダーで動物たちの曜日と時間をチェックしてくださいね」

取材をした3月中旬は、クジャクが目いっぱい羽を広げているところを見ました。大きな鳴き声を出して、自信満々の得意げなクジャクの姿に、みんな釘付けでした。

「あれはオスの求愛行動なんです。一年中羽を広げていると勘違いされている方も多いのですが、3~5月の繁殖期にしか見られないメスに向けての猛烈アピールなんですよ。これ以上大きくできないほど羽を広げている姿は圧巻ですね」。

動物たちを間近で観察できる動物園は、生命の営みをダイレクトに感じられる場所。動物たちの知らなかった一面や本来の姿が見られるタイミングを知って動物園を訪れれば、もっと距離が近づきますね。

※イベントカレンダー

クジャクの画像
クジャクのオスの雄姿は、春しかお目にかかれません!

まとめ

「生活に便利でなんでも手に入る都会で、動物たちにも会えるなんて、横浜だからこそ」と田村園長は言います。

都会の中で動物たちの生態を学び、体験を通じて親子で命の大切さを感じる。横浜の動物園は子どもたちの成長を応援し、心を育くみます。

園長が野毛山動物園入口前で手を組んで立っている様子の画像

野毛山動物園は、さらに誰にでも開かれた動物園を目指してリニューアルし、より魅力的な姿に変化していきます。動物園が身近にある暮らし、横浜で始めませんか。

【基本情報】
野毛山動物園
住所:横浜市西区老松町63-10
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/nogeyama/

よこはま動物園ズーラシア
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/zoorasia/

金沢自然公園 金沢動物園
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/kanazawa/

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