新鮮な農産物が届く「ハマッ子」直売所で旬の野菜をゲット。暮らしやすく、落ち着いた雰囲気の街に、子どもたちの歓声が響く。
青葉区の田奈駅から徒歩約10分で、広い敷地の片隅に蔵が建っているのが目に入る。「ハマッ子」直売所四季菜館だ。中は白壁に野菜の緑が映えて、自然と気持ちが高まってくる。

JA横浜の販売部販売課、齋藤秀人さんにお話を伺った。昭和12年に農業倉庫として建築されたが、平成23年にこの場所に移築された。「蔵だけにクラい」し、漆喰の壁にはポスターを貼れないなど制約も多いが、働いていても「良い建物だなあ」と思うらしい。

野菜も加工品も、基本は市内産だ。
「横浜でピーナッツが採れるんですか?」
有名なのは瀬谷地区だそうだ。取材時は里芋やさつま芋の最盛期。大量にあるのが大根、白菜、ブロッコリー、レタス系で、「売るほどある」。珍しいところではカリフラワーをほぐしたような「カリフローレ」や、ブロッコリーとケールを掛け合わせた「アレッタ」。
「直売所は市内に13か所ありますが、カリフローレとアレッタが揃っているのはうちぐらいです」

珍品でも200円前後とお手頃だ。値段は出荷者が付けているが、利用者に気を遣っているらしい。
私の買い物カゴにはすでにかなりの量の野菜が入っていたが、今度は加工品に手が伸びる。小山農園のドレッシング、清水屋のケチャップ。浜なしのジャムは農家の手作りだ。
「JAが欲しい物を言うと、農家の方が率先して加工品を作ってくれるんです」
客の声をJAが集約して農家に伝え、農家がそれに応え、良いサイクルが出来ている。

赤ちゃんを抱っこした男性が買い物をしているのに声をかけた。森田さんは青葉台から週1回こちらに来ている。野菜はここ、あとは決まった肉屋に寄るというこだわりの消費者だ。
「近くで採れたもののほうが鮮度もいいですからね」
鮮度を実感するのは春のイチゴだと頬をゆるめた。

買い物の後は、日向ぼっこをする。たまプラーザ駅を中心とする地域密着型商業施設が「たまプラーザ テラス」。その中の東急百貨店たまプラーザ店は、3階の屋上が「COMMON FIELD」という1,000坪の庭園になっている。数段の石段を登ると左右に植え込みがあり、その先には人工芝のスペースがある。少年が2人、寝転がっている。冬の優しい日差しが、じんわり肌に沁みてくる。芝にも段がしつらえてあり、母娘連れが座っている。その横に腰を下ろした。丸山さんは今日休みが取れ、「遠出も何だから」とこちらに来た。職場の関係で青葉区に引っ越して10年以上経つ。
「たまプラーザは駅から出なくても全部済んじゃうんです」
たまプラーザ テラスには週に3回くらい来る。庭園のついでに買い物をして帰ったり、買い物のついでに庭園に来たりする。6歳の楓優香ちゃんは来年小学生。地域に何校もあり、教育も充実しているという印象だ。
「公園もいっぱいありますしね」
美しが丘公園のログハウスは楓優香ちゃんが大好きと聞いて、後で回ることにした。

庭園の一角には「WOODBERRY COFFEE」がある。テラス席で店長の諏訪良太郎さんからお話を伺った。店の特徴をひと言で言えば、サステナブル。4年前から直接農園に豆の買い付けに行っている。エルサルバドルとグアテマラに、今年からエチオピアとパナマも加わった。輸入会社が間に入ると農園の儲けが少なくなる。農園の生活がより豊かになるようにと、直接やり取りをしている、というわけだ。

おしゃれな店内もいいが、テラス席は庭園に面している。子どもたちを遊ばせながら、親はコーヒーを片手にピクニック気分を味わえる。

コーヒーにもこだわりがある。ハンドドリップで提供しているが、使う水は白神山地から取り寄せた超軟水で、これにカルシウムとマグネシウムを加えた「カスタムウォーター」にしてある。ハンドドリップの大会ではこの仕様の水が主流だが、それを普段の店で提供するのは「他所ではあまり聞いたことがない」。自慢のコーヒーに後ろ髪を引かれながら庭園を後にした。
東急百貨店の事務所で待っていてくださったのは、たまプラーザ店店長の小川妙子さんだ。小川さんはたまプラーザという街を東急線沿線の「核」とも「拠点」とも捉えている。東急百貨店が開店したのは43年前。当時だからこそ可能な「贅沢な作り」で、横断歩道を通らずに店から直結して駅に抜けて行ける。

その後、東急は、交通事業を根幹に、不動産、生活サービス、ホテル・リゾートなど、人々の日々の生活に密着したさまざまな分野で事業を展開しており、東急の街づくりにおける代表的な街の1つがたまプラーザなのだ。
たまプラーザには連合自治会、企業、3つの商店会(街)から構成される「we love tamaplaza project」があり、東急グループ各社もこれに参画。イベントから公園の清掃まで、より住みやすい街にするべく活動している。

「この街の魅力って何ですか?」
「住んでいる人です」
ひとつのエピソードがある。百貨店で客のひとりが大荷物を抱えて困っていた。そうと気づいた別の客が、店員に声をかけた。
「私は後でいいから、あちらの方のお手伝いをしてさしあげて」
心にも生活にもゆとりのある人物像が見えてくる。心地よい店も、街も、作るのは人と胸に刻んだ。
百貨店から駅直結のショッピングセンターへ。ゲートプラザの1階に「Kuradashi」はある。店頭のビールの行列に目が止まった。輸入品にしては値段が安い。店内にはカップ麺、缶詰、オリーブオイル、レトルトカレーなど、アットランダムに並んでいる。店全体が特売品とわかった。パッケージに傷があったり、賞味期限が近かったりする商品なのだと広報の齋藤花伽さんが教えてくれた。

賞味期限について、驚きの事実を知った。製造日から賞味期限までを3等分する。その3分の1を過ぎたら納品ができなくなる。メーカーは在庫を抱え、フードロス一直線になる。
そういった商品を食品メーカーから購入してお得な価格で販売し、さらに売上げの一部で社会貢献団体を支援する。客はお得に買って、社会にも貢献できるというわけだ。
レジの脇にカラフルなボタンが詰まった透明容器が置いてある。店の奥の壁には、ボードが7枚貼ってあり、それぞれに「飢餓・貧困」や「環境保護」など用途が明記され、透明ボックスが設えてある。客はレジで受け取ったボタンを、自分の好きなボックスに入れていく。社会貢献に参加しているという実感が味わえる。

店舗を運営する株式会社クラダシのコンセプトは、社会性・環境性と経済性の両立だ。創業者の関藤竜也さんは大阪出身で、阪神淡路大震災に遭遇した。被災地にリュックで救援物資を運んだが、ひとりの努力には限界があると悟った。その後、商社員として中国に赴任し、大量生産と大量廃棄の現実を目の当たりにした。持続可能な社会の実現には、楽しんで参加できる「仕組み」が必要であり、その仕組みをもって社会課題を解決していく道を選んだ。

こちらはKuradashi初となる常設店舗である。たまプラーザ テラスを運営している(株)東急モールズデベロップメントは、青葉区の環境意識の高さに応えるべく、出店を要請した。
「地域住民の方々と一緒に、前向きに取り組んでいきます」
その間にも、次々とボタンが投げ入れられていく。思いが形になっていく。

初冬の陽が翳らぬうちにと、美しが丘公園に急いだ。
紅く色付いた桜並木を横切った先が、広大な敷地になっている。緑の草地と木々の先には、右手に遊具が点在し、子どもたちが思い思いに遊んでいる。左手の丘を登ると、おとぎ話に出てきそうな美しが丘公園こどもログハウス(ロケットハウス)である。

中は子どもたちの歓声に満ちている。螺旋状の滑り台、バスケットゴール、2本の丸太にネットを張った遊具。

走り回っている中の3人に声をかけた。「ここは意外に来る」とAくん。週に1、2回、習い事のない日に来る。BくんとCくんも同様だ。

「結構楽しい」
「いつも大体鬼ごっこ」
地下迷路でやる鬼ごっこは「ホラーゲーム」と名前が付いている。
「図書コーナーでパズルとかたまにするよ」
3人は同じ小学校の3年生だった。幼児には親の付き添いが必要だが、小学生なら受付で学年と人数と居住区分を書けば子どもたちだけでもOKだ。

図書コーナーに行くと、山田優希さんが7歳の恵輔くんと5歳の航平くんを遊ばせていた。1週間に3、4回とヘビーユーザーなのは、家が徒歩3分のところにあるからだ。今日はお兄ちゃんがひとりで来ていたのに、後から合流した。
「外は広いのに、子どもたちは結構ここに集まるんです。この空間が楽しいんでしょうね」
学校が多いため、幼稚園や保育園は同じでも小学校が別々になるケースが多いのだが、ここに来れば園の頃の友人に偶然会えたりもする。小さな子の社交場なのだ。
航平くんが赤ちゃんの頃は、夏の暑い盛りにしょっちゅう来ては、エアコンで涼を取った。冬の寒い時期も、公園で遊べなくてもここなら暖房で大丈夫。常駐の職員がいて、危ないことをしている子には声をかけてくれるので安心だ。
山田さんは藤沢市在住だったが、恵輔くんが5か月の時に横浜市青葉区のたまプラーザに来た。引っ越しの決め手のひとつは治安の良さだった。

「子どもがひとりで公園に行く、と言っても『走らないでね』ぐらいの注意で済みます」
夫は乗り換えなしで都内に通勤できて便利だという。
「春の桜並木はすごくきれいですよ」
微笑む山田さんは、目の隅で恵輔くんと航平くんの動きを追っていた。
こどもログハウスは横浜市内に各区1施設、18か所ある。小西館長によると、美しが丘公園こどもログハウスは他のログハウスの1年分の利用者を1か月でこなすという。土日は開館前に行列ができ、80人の入れ替え制になっている。東急東横線や大井町線の沿線からの、川崎市や都内から来る利用者も多いという。
「学校と家とはまた違った場所なので、子どもたちはここでのびのびと過ごすのでしょう。」
子どもたちの楽園を後にすると、外はもう暮れかかっていた。歓声が、耳の底に残っていた。
【基本情報】
JA横浜「ハマッ子」直売所 四季菜館
住所:横浜市青葉区田奈町52-8 (田奈支店敷地内)
URL:https://ja-yokohama.or.jp/tenpo/hk_shikisaikan
たまプラーザ テラス
住所:横浜市青葉区美しが丘1-1-2
URL:https://www.tamaplaza-terrace.com/
東急百貨店 たまプラーザ店
住所:横浜市青葉区美しが丘1-7
URL:https://www.tokyu-dept.co.jp/tama-plaza/
COMMON FIELD
住所:横浜市青葉区美しが丘1-7
たまプラーザテラス ノースプラザ(東急百貨店)3階庭園
URL:https://www.tamaplaza-terrace.com/commonfield/
WOODBERRY COFFEE たまプラーザ店
住所:横浜市青葉区美しが丘1-7
たまプラーザテラス ノースプラザ3階庭園(東急百貨店3階屋上)
URL:https://www.woodberrycoffee.com/
Kuradashi たまプラーザ テラス店
住所:横浜市青葉区美しが丘 1-1-2
たまプラーザ テラスGATE PLAZA1F
URL:https://www.tamaplaza-terrace.com/floor/detail/?cd=000520
美しが丘公園こどもログハウス(ロケットハウス)
住所:横浜市青葉区美しが丘 2-22
美しが丘公園内
URL:https://yokohama-shisetsu.com/log/
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ライター:荻野アンナ
1956年横浜市生まれ。慶應義塾大学文学部卒。83年より3年間、ソルボンヌ大学に留学、ラブレー研究で博士号取得。89年慶應義塾大学大学院博士課程修了。以後2022年まで同大で教鞭をとり、現在名誉教授。1991年「背負い水」で第105回芥川賞、2002年『ホラ吹きアンリの冒険』で第53回読売文学賞、08年『蟹と彼と私』で第19回伊藤整文学賞を受賞。そのほかの著書に『カシス川』『老婦人マリアンヌ鈴木の部屋』など。神奈川近代文学館館長。





